実験で電圧の変化を記録するとき、測定器には「どのくらいの間隔で値を取り込むか」という設定があります。そこで出てくるのが、サンプリング周期とサンプリング周波数です。
たとえば「サンプリング周期は1 ms」と「サンプリング周波数は1 kHz」は、どちらも同じ間隔で値を取り込む設定を表しています。
違いは、「何秒おきに測るか」で見るか、「1秒間に何回測るか」で見るか。この記事では、図と具体例を使って、1 ms → 1 kHz → 1 kS/sの関係を整理します。
そもそもサンプリングとは?
時間とともに変化する電圧を測る場面を考えてみましょう。電圧は連続的に変化していますが、データとして扱うには、ある時刻の値を取り出します。このように信号の値を取り出すことをサンプリングと呼びます。
イメージは、「今の電圧は何Vか?」を繰り返し確認することです。取得した1つの値をサンプルと呼びます。ここでは、一定の時間間隔で1回ずつ値を取得する場合を考えます。
サンプリング周期:何秒おきに測るか
サンプリング周期 Tsは、隣り合うサンプルを取得する時間間隔です。単位にはs(秒)、ms(ミリ秒)、μs(マイクロ秒)、ns(ナノ秒)などを使います。
たとえば、0 ms、1 ms、2 ms、3 ms……で取得するなら、隣り合う時刻の差は1 ms。サンプリング周期はTs = 1 msです。

サンプリング周波数:1秒間に何回測るか
サンプリング周波数 fsは、1秒間に何回サンプリングするかを表します。単位はHz(ヘルツ)です。
周期が短いほど、1秒間に測れる回数は増えます。逆に、周期が長いほど回数は減ります。この関係を式にすると、次のようになります。
fs = 1 / Ts
逆に、周波数から周期を求めるときは、
Ts = 1 / fs
です。Tsを秒(s)で入れるとfsはHzで、fsをHzで入れるとTsは秒(s)で求まります。まず単位をそろえるのがポイントです。
1 msなら、なぜ1 kHz?
1 msは1秒の1000分の1なので、1 ms = 0.001 sです。これを式に入れてみます。
fs = 1 / 0.001 = 1000 Hz = 1 kHz
1秒を1 msずつに区切ると、1000個の区間に分かれます。その間隔で1回ずつ測るので、「1 msごとに1回測る」ことは「1秒間に1000回測る」ことになります。
k(キロ)は1000倍を表すため、1000 Hzを1 kHzと書けます。「1 msと1 kHzが等しい」という意味ではなく、同じサンプリングの間隔と頻度をそれぞれ表しています。
10 kHzなら、サンプリング周期は?
今度は逆方向です。10 kHz = 10000 Hzなので、1秒間に10000回測ります。
Ts = 1 / 10000 s
= 0.0001 s
= 100 μs
つまり、10 kHzでサンプリングするとは、100 μs(0.1 ms)ごとに1回測ることです。主な対応を表にまとめると、次のようになります。
| サンプリング周期 | サンプリング周波数 |
|---|---|
| 1 s | 1 Hz |
| 100 ms | 10 Hz |
| 10 ms | 100 Hz |
| 1 ms | 1 kHz |
| 100 μs | 10 kHz |
| 10 μs | 100 kHz |
| 1 μs | 1 MHz |
μ(マイクロ)は100万分の1、M(メガ)は100万倍です。周期が10分の1になると、周波数は10倍になります。
HzとS/sは何が違う?
測定器では、サンプリング周波数のほかにサンプリングレート(サンプルレート)という言い方もよく使います。こちらも、どれくらいの頻度でサンプルを取得するかを表す言葉です。
Hzは、周期的な動作の1秒あたりの回数を表す、周波数の単位です。一方、S/sはSamples per secondの略で、「1秒間に取得するサンプル数」を明示します。
今回のように一定間隔で1回につき1サンプルを取得するなら、1 kHzは1秒間に1000回、1 kS/sは1秒間に1000サンプルという対応になります。
サンプリング頻度としては数値が対応しますが、どんな場面でもHzとS/sを置き換えてよいわけではありません。Hzは周波数、S/sはサンプル数として表している、と考えると整理しやすくなります。
信号の周波数と、サンプリング周波数は別物
たとえば、100 Hzの正弦波を、10 kHz(10 kS/s)でサンプリングする場合を考えます。正弦波は、なめらかな山と谷を繰り返す波です。
100 Hzは、測っている信号そのものが1秒間に100回繰り返すことを表します。1周期は10 msです。
対して10 kHz / 10 kS/sは、測定器が値を取得する頻度です。0.1 msごとに1点ずつ値を取り出します。

サンプリングを細かくしても、元の信号が100 Hzから10 kHzになるわけではありません。「波が変化する速さ」と「こちらが値を取り出す頻度」は別の話です。
サンプリング周波数は、高ければ何でもいい?
サンプリング周波数を高くすると、時間方向に細かく値を取得できます。ただし、常に最大にしておけばよい、とは限りません。
同じ時間を記録するなら、サンプル数が増えてデータ量も増えます。反対に、保存できるサンプル数(メモリ長・レコード長)が決まっているなら、サンプリング周波数を高くするほど記録できる時間は短くなります。
見たい変化の速さだけでなく、どれくらい長く記録したいかも合わせて考えます。
「2倍以上なら大丈夫?」は、少し注意
ここで、サンプリング定理にも少しだけ触れておきます。信号に含まれる周波数がある上限fmaxまでに限られている場合、理想的に元の信号を復元するための条件は、
fs > 2 fmax
です。fmaxは信号に含まれる最も高い周波数成分を指します。「>」は、ちょうど2倍ではなく2倍を超える、という意味です。
ただし、これは理想的な復元の条件であり、「100 Hzの信号なら200 Hz程度で測れば、実用上いつでも十分」という意味ではありません。波形に含まれる周波数成分や、どの程度忠実に波形を観測したいかも関係します。
取得する頻度が足りないと、元の信号とは違う周波数に見えるエイリアシングが起こることがあります。詳しい仕組みや、実際のオシロスコープでのサンプリングレートの考え方は、別記事で扱う予定です。
まとめ
サンプリング周期は何秒おきに測るか、サンプリング周波数は1秒間に何回測るか。同じサンプリングを、時間間隔と回数という2つの見方で表しています。
Ts = 1 ms → fs = 1 kHz → サンプリングレート = 1 kS/s
この関係を「1 msごとに測るから、1秒間では1000回」と説明できれば、この記事のゴール達成です。計算では、まずsやHzに単位をそろえてから、逆数を取ってみてください。
参考資料
定義や単位、理想的な標本化条件は以下の資料を確認しました(2026年10月2日)。本文の図は、この説明のために独自に作成しています。
- 横河計測:SL1000 アクイジションソフトウエア ユーザーズマニュアル:1-11ページ「サンプルレート/サンプル周期」
- 横河計測:オシロスコープの基礎:サンプリング、レコード長の考え方
- NI:Acquiring an Analog Signal:Sample Rate、Nyquist Sampling Theorem
- BIPM:SI prefixes:ミリ・マイクロ・キロ・メガの接頭語


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