5 Vの電圧を、2.5 Vや1 V程度に小さくして読み取りたい。そんなときに使われる基本回路の一つが、分圧回路です。抵抗2本だけで作れますが、「抵抗比を覚えれば終わり」ではありません。
よく使うのは、電圧を測るなど、出力から取り出す電流が小さい場面です。機器を動かすための安定した電源とは、役割が違います。
この記事では、オームの法則から分圧式を導き、どの抵抗が分子にくるのか、負荷をつなぐとなぜ電圧が変わるのかまでを確認します。まずは、入力電圧が一定の理想的な直流回路として考えましょう。
分圧回路とは? 抵抗2本の中点を使う
入力電圧VinとGNDの間に、抵抗R1とR2を直列につなぎます。その中点の電圧が出力Voutです。GNDは、ここでは電圧の基準となる0 Vの点を表します。

電圧は、2点の間の電位の差です。今回のVoutは「中点とGNDの差」なので、R2の両端電圧にあたります。[1]
まずは直列回路として、電流を求める
出力から電流を取り出さない状態を無負荷と呼びます。このとき、電流の通り道はR1とR2を順に通る1本だけ。両方の抵抗に同じ電流Iが流れます。
直列抵抗の合計はR1 + R2。この全体にVinがかかるので、オームの法則から、
I = Vin / (R1 + R2)
となります。まず「全体の電圧÷全体の抵抗」で、回路を流れる電流を求めたわけです。[1]
VoutはR₂の両端電圧:ここから公式を導く
R2にも、今求めた電流Iが流れます。抵抗の両端電圧は「電流×抵抗」なので、
Vout = I × R2
ここに、先ほどのIを代入します。
Vout = Vin × R2 / (R1 + R2)
これが分圧回路の公式です。新しい法則ではなく、全体で電流を求め、見たい抵抗にオームの法則を使っただけです。[1]

どちらの抵抗を分子にするのか
名前がR2だから分子になる、という決まりではありません。出力として見ている抵抗の両端電圧だから、その抵抗が分子にきます。
図1で、上側のR1の両端、つまりVinの点と中点の間の電圧を求めたいなら、
VR1 = Vin × R1 / (R1 + R2)
です。これは中点とGNDの間のVoutとは別の電圧です。「どの2点の間を見るのか」を先に決めると、分子を取り違えにくくなります。
具体例:5 Vを2.5 V、1.25 Vにする
例1:R1 = 10 kΩ、R2 = 10 kΩ。kΩは1000 Ωを表します。抵抗の単位をそろえて代入すると、
Vout = 5 V × 10 / (10 + 10)
= 5 V × 1/2 = 2.5 V
同じ抵抗なので、入力の半分です。このときの電流は5 V / 20 kΩ = 0.25 mAになります。
例2:R1 = 30 kΩ、R2 = 10 kΩなら、
Vout = 5 V × 10 / (30 + 10)
= 5 V × 1/4 = 1.25 V
全抵抗40 kΩのうち、出力側の10 kΩにかかる分を見るので、入力の4分の1です。いずれも無負荷・抵抗誤差なしの計算値です。
抵抗値は「比」だけ見ればいい?
無負荷の理想回路なら、電圧比は抵抗比で決まります。5 V入力で、1 kΩと1 kΩでも、100 kΩと100 kΩでも、出力は2.5 Vです。
ただし、流れる電流は違います。前者は5 V / 2 kΩ = 2.5 mA、後者は5 V / 200 kΩ = 25 μA。抵抗を大きくすると、分圧回路自身が消費する電流は小さくなります。
実際には、つなぐ回路の入力インピーダンス、漏れ電流、ノイズ、入力容量による応答速度も関係します。抵抗を大きくすれば何でもよいわけではなく、比に加えて抵抗値そのものも重要です。ADCにつなぐ場合は、使用する部品の仕様に合わせて決めます。[3][5]
負荷をつなぐと、もう一つの電流経路ができる
出力につながる回路を負荷と呼びます。ここでは、出力とGNDの間につながる抵抗RLとして考えます。

負荷をつなぐと、中点からGNDへ向かう通り道が増えます。R1を流れてきた電流は、R2とRLへ分かれるため、もうR1とR2に同じ電流が流れるとは限りません。
そこで、下側の並列部分を一つの合成抵抗Rpとして扱います。「||」は並列接続を表す記号です。[2]
Rp = R2 || RL
= (R2 × RL) / (R2 + RL)
あとは、無負荷の式のR2をRpに置き換えるだけです。
Vout = Vin × Rp / (R1 + Rp)
例えば、Vin = 5 V、R1 = R2 = RL = 10 kΩなら、並列部分は5 kΩです。
Vout = 5 V × 5 / (10 + 5)
≈ 1.67 V
無負荷の2.5 Vから下がりました。正の抵抗をつないだこの回路では、並列部分の抵抗がR2より小さくなるため、出力電圧も下がります。
入力インピーダンスが高いと、なぜ影響が小さい?
入力インピーダンスは、つないだ回路の入力側がどれくらい電流を流しにくいかを表します。今の直流の抵抗モデルでは、負荷抵抗RLが大きいほど、取り出される電流が少なくなります。
5 V入力、R1 = R2 = 10 kΩの回路を、同じ式で計算して比べます。
| 負荷 | 出力電圧 |
|---|---|
| 無負荷 | 2.500 V |
| 1 MΩ | 約2.488 V |
| 10 kΩ | 約1.667 V |
1 MΩの場合は約0.5%の低下ですが、10 kΩでは約33%下がります。高い入力抵抗は、分圧回路の電圧をあまり変えずに読み取るのに有利です。どこまでの変化を許容できるかは、測定に必要な精度によります。
ただし、ADCの入力をいつでも一定の抵抗とみなせるわけではありません。例えばSAR型ADCには、入力電圧を一時的に保持するコンデンサがあります。信号源の抵抗が大きすぎると、決められた時間内に十分充電できないことがあるため、データシートの入力条件を確認します。[3]
オシロスコープで測るときも、負荷になる
オシロスコープやプローブも、つなげば測定対象の回路に影響します。直流やゆっくり変化する信号では、測定系の入力抵抗が十分高いほど、先ほどの分圧への影響を小さくできます。
一方、プローブには入力容量もあり、速く変化する信号ではその影響も効きます。「入力抵抗が高いから、どんな波形もそのまま測れる」とは言い切れません。[4]
入力抵抗とは別に、オシロスコープの帯域や取得点数の意味を整理したい場合は、サンプリングレートと周波数帯域の違いを参照してください。
ADCでは、測れる電圧範囲に合わせるために使う
ADCは、アナログの電圧を数値へ変換する回路です。例えば、センサ出力が0〜10 V、ADCの測定範囲が0〜3.3 Vなら、そのままでは範囲を超えます。そこで、分圧で電圧を小さくして入力する方法があります。[5]
R1 = 20 kΩ、R2 = 10 kΩなら、出力は入力の1/3。しかし10 Vでは約3.33 Vになり、3.3 Vを超えます。この比率のままで適合すると考えてはいけません。
比率を少し小さくした説明例として、R1 = 22 kΩ、R2 = 10 kΩなら、無負荷の理想値は次のようになります。
Vout = 10 V × 10 / (22 + 10)
= 3.125 V

実際には、抵抗誤差、入力電圧の最大値、過電圧保護、ADCの入力特性なども確認します。測定できる電圧範囲と、破損を避けるための絶対最大定格は別です。22 kΩと10 kΩを付けるだけで安全、という意味ではありません。
分圧で入力範囲を合わせ、その電圧をADCで数値にする。この流れが、センサやマイコン入力を理解する次の一歩になります。
分圧回路は、電源代わりに使える?
無負荷で2.5 Vになったからといって、2.5 Vで動く機器をそのままつなげるとは限りません。負荷が電流を取り出すと、すでに見たように電圧が変わります。動作中に消費電流が変わる機器なら、電圧も変動します。[2]
安定した電圧で機器へ電力を供給したいときは、用途に合うレギュレータやDC-DCコンバータなどを使います。分圧回路はまず、電圧の一部を取り出して読み取る回路として捉えると、役割を混同しにくくなります。
まとめ
無負荷の分圧回路は抵抗2本の直列回路です。同じ電流Iを求め、出力として見ている抵抗の両端電圧を計算すれば、公式を導けます。
Vout = Vin × R2 / (R1 + R2)
分子がR2なのは、今回の出力がR2の両端電圧だからです。そして、負荷をつなぐと下側の抵抗との並列回路になります。「どこの電圧を見るか」「何をつなぐか」の2点を意識すれば、ADCや測定回路で出会う分圧も、式の意味から考えられます。
参考資料・計算について
[1]Analog Devices:M1K Basics and Voltage/Current Dividers
[2]University of Colorado Boulder:Modeling Measurement Systems Using Voltage Dividers(§2.6、2.7)
[3]Microchip:Analog-to-Digital Converter (ADC) Acquisition Time
[4]Tektronix:How Oscilloscope Probes Affect Your Measurement
[5]Texas Instruments:SNAA363 電圧検出回路のアプリケーション資料
資料確認:2026年10月9日。本文の数値は理想的な直流回路の式から計算した値で、実測結果ではありません。図は本記事のために作成したオリジナルの説明図です。


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